沼薬師如来(利根町)

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薬師如来

昔、上曽根村の南に、利根川に続く大きな沼がありました。ある日のこと、その沼が轟々と大きな波音を立てて黄金に輝きだしました。

村人達は、神様のお怒りかと驚いて神主に祈祷してもらうと、沼の中に長い間、薬師如来様が埋まっていて丘に上がりたいとのだということがわかりました。

村人達は、それならばと一生懸命働いて小さいながらも立派な御堂を造りました。そして薬師如来様をどうかして引き上げようと話し合いましたが、沼は深く泥が溜まっていて肝心の薬師如来様の位置も分かりません。その日は休むことにして家に帰ろうということになりました。

その夜、名主の権左衛門が寝ていると、枕元に白髪の老人が現れて、

「御堂を建ててくれて感謝する、明日、引き上げてくれるそうだが心配はいらない。我らの方から御堂に入らせてもらうつもりだ」と言うとスーッと消えてしまいました。

翌朝、権左衛門が急いで御堂に行くと、昨夜の夢のお告げの通り、薬師如来をはじめ、脇侍の日光菩薩月光菩薩や眷属の十二神将までがずらりと入室していたのです。権左衛門は、「薬師如来様が入られたぞ、ありがたいことじゃ。」と村中に触れ回りました。名主の話が信じられなかった村人達も、御堂の中を見ると驚き、頭を地面に擦りつけるようにして拝みました。


この噂は、あっという間に近隣から遠方へと伝わり、薬師様を拝もうとする参拝者が後を絶たなかったということです。

<参考文献>利根町の昔ばなし(高塚 馨著)

 

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